数あるスポーツの中でも、その生まれたきっかけがはっきりと記録に残っているスポーツがあります。それは、バスケットボールです。バスケットが生まれるまでの流れをご紹介します。
【目次】
バスケットボールの日
バスケットボール解説者の島本和彦さんが提唱し、2011年(平成23年)12月19日に、「12月21日はバスケットボールの日!委員会」が制定しました。12月21日である理由は、1891年(明治24年)12月21日に、アメリカのマサチューセッツ州のスプリングフィールドで、バスケットボールの初試合が行われたことを記念して制定されました。
バスケットボールの由来
バスケットボールが生まれたのはアメリカのマサチューセッツ州のスプリングフィールドです。考案者は同区の国際YMCAトレーニングスクール(現在:スプリングフィールド・カレッジ)で体育部教官を務めていたカナダ人のジェームズ・ネイスミスさんです。考案されたきっかけは、1891年(明治24年)の夏に、国際YMCAトレーニングスクールでは体育・スポーツ指導者の講習会が開かれていましたが、当時、全米各州のYMCAでは冬季の屋内における体操中心のプログラムについて学生の意欲が低いとして、既存のプログラムに対する不満があったことから、新しいプログラムの考案が議題にあがっていました。そして、同年の秋に、体育部主事であったルーサー・ギューリックさんは5人の体育指導教官を集めて、新しいプログラムを数回にわたり検討した結果、新しいスポーツを創り出すほかはないとの結論に達します。その体育指導教官であった1人のジェームズ・ネイスミスさんは、アメリカンフットボール、サッカー、ラクロスなどを屋内ゲームとして取り入れようとしましたが、いずれも失敗に終わります。そこで、ネイスミスさんは各ゲームの「コート内でボールを使用すること」だけを取り上げます。そして、タックルプレーの危険性を排除しようとして、ボールを保持したまま走ってはいけないようにしました。更に、ゲーム中の安全性を高めるため競技者間の身体接触を少なくすることを考えて、ゴールをプレーヤーの頭上に設置することとしました。これにはネイスミスさんが少年時代を過ごしたカナダのオンタリオ州の雄鴨落し(Duck on the Rock)という的当て遊びにヒントを得て決めました。「うまく“雄鴨”に当てていたのは、石を弧を描くように空中高く投げ上げていた者だった」ことを思い出し、水平にボールをショットする(投げ入れる)形式を思いついたのだそうです。雄鴨落しは以下に記述していますのでご参照下さい。ネイスミスさんが最初に考案した13のルールは現在では約250にまでおよんでいますが、基本的にほとんどかわっていません。
雄鴨落し(Duck on the Rock)
おのおのが握りこぶしくらいの大きさの石(雄鴨)を持ち、大きな岩から約7mほど離れたところに線を引きます。誰か1人が“雄鴨役(鬼)”となり、自分の石を岩の上に置き、岩のそばに待機します。残りの人は、その“雄鴨役(鬼)”の石を狙って、各自の石を投げて競います。的当てのように石を投げ、岩の上から“雄鴨役(鬼)”の石を当て落とせば終了です。当てるのを失敗すると、“雄鴨役(鬼)”のタッチをうまく避けて自分の石を拾ってこなくてはなりません。タッチされたら“雄鴨役(鬼)”役は交替します。
ネイスミスさんが考案した13のルール
①ボールはサッカーボールを使用し、片手あるいは両手で、どの方向へパスしてもよい。
②ボールは片手、あるいは両手でどの方向に叩いてもよい。ただし、こぶしでたたくのは禁止する。
③プレーヤーはボールを保持したまま走ることはできない。また、ボールをキャッチした地点からパスしなければならない。かなりのスピードで走っている時にボールをキャッチした場合、もし、ストップしようと努力しているならば一、二歩程度は許されることもある。
④ボールは両手で保持しなければならない。両腕やからだを用いてはならない。
⑤どのような方法であれ、相手を小突いたり、捕まえたり、押したり、つまずかせたり、たたいたりすることは許されない。この規則の第1回目の違反は1個のファウルとする。2回違反を犯した場合は次のゴールが成功するまで退場とする。もし、故意に相手を傷つけようとするようなプレーであると見なされた場合は、ゲーム終了後まで退場とする。
⑥第1、2、3、4条で述べたことに1回違反を犯すごとに、1個のファウルとする。
⑦両チームのどちらかが連続して3個のファウルを犯すと、その相手チームに1ゴールを与える。(「連続」とはその間に相手チームがひとつもファウルをしないという意味である)
⑧ボールがスローされるか、あるいは、タップされてバスケット内に入ればゴール成功である。もし、ボールがバスケットの縁に止まったり、ショットした時に相手がバスケットを動かしたりした場合もゴール成功と見なされる。
⑨ボールがコート外に出た場合はそののちに最初にボールを保持したプレーヤーなら誰でもスローインできる。そのとき、スローアーは5秒間だけ相手チームから妨害されないでボールを保持することを許される。もし、どちらのチームのボールとなるか判定がつかないときは副審がその位置からコート内にスローインする。スローインの際に5秒間を超えるとボールは相手側に与えられる。また、スローインの際、どちらかのチームがゲームを遅らせようとした場合、副審はそのチームにファウルを宣告する。
⑩副審はプレーヤーを審判し、ファウルを記録し、連続3回のファウルがあったときは主審にこれを知らせる。主審は第5条によってプレーヤーを失格させる権限を有する。
⑪主審はボールをめぐるプレーを判定し、いつボールがインプレーとなるか、インバウンズとなるか、どちら側のチームにボールが与えられるのかなどを決定する。また、競技時間を計る。さらに、ゴール成功を確認し、その回数を記録する。これらに加えて、他のゲームで主審がいつも担っているような任務も務める。
⑫競技時間は15分ハーフ制とし、5分間のハーフタイムを置く。
ゴール成功の多かったほうが勝者となる。もし、同点の場合は両チームのキャプテンの同意をもとに次のゴールが成功するまでゲームを続ける。
まとめ
バスケットボールが生まれるまでをご紹介しました。意外に歴史が浅いことには驚きますね。ちなみに、各スポーツの発祥については明確に定義できないことが多い中で、このバスケットボールは唯一、発祥の日が判明しているスポーツのようです。私も学生時代のクラブでは、スラムダンクやDEAR BOYSに感化されてバスケットボールをやっていましたが、バスケットボールの由来までは知りませんでした。こうして、勉強するとスポーツを考案されたきっかけを知るのも面白いものですね。